1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. ワッシャー加工職人の声②

BLOG

ブログ

ブログ

ワッシャー加工職人の声②

当社のあるのは、木曽川の清流の元、繊維加工業で有名な尾州一宮(愛知県北西部、名古屋と岐阜の中間)。繊維工業出荷額は、現在も全国一。それは、地域内に分業化された加工工程が集中し、各工程の高度な技術力と知識が蓄積されているからです。それにより多種多様な素材の複合化が進み、目まぐるしいファッショントレンドや多様な消費者ニーズに適合し、その差別化され、高付加価値な製品は、国内外から支持されています。
しかし、そのような製品を生み出していくには、特殊な機械、高度な技術力と知識が必要であり、それを継承していくことが重要なのです。そして、当社のワッシャー加工と同じような特殊な繊維加工技術を要する尾州一宮地域の他の企業においても同じような悩みを訴えています。

例えば、ションヘル織機というシャトル織機も同じような境遇です。
ドイツのションヘル社の織機をもとに日本で製造されたもので、1950年代に普及したのですが、大量生産が可能な高速織機の台頭と共に生産中止となり、いまでは国内での稼働台数も少ない貴重な存在となっています。ションヘル織機にこだわったものづくりについて、
ションヘル織機で織ると、現在主流のシャトルを使わない高速織機に比べて経糸の張りもゆるやかなため、繊維を傷めることなく優しくゆっくり織り進めることができ、ウールの収縮性を活かしたふっくらとしなやかな風合いを持った生地になるのです。そのウール生地は国内最高級と評され、国内外のハイブランドや有名デザイナーにも採用されているのです。
しかし、そのションヘル織機を維持し、稼働させていくのは並大抵なことではありません。昔ながらの機械なので、メンテナンスも自分たちでやっていかねばなりません。部品が壊れた時は、鍛冶屋さんに修理してもらったり、中古品を再利用するなど、手入れをしながら大切に使い続けられています。

以上のションヘル織機を取りまく環境や条件に関して、当社のワッシャー加工に使う大きなドラムを持った洗濯機、遠心脱水機、タンブラー乾燥機も同じような状況なのです。
日本国内でも量産規模で所有している工場は少なく、繊維加工業の盛んな北陸地方でも数社、中国地方ではほとんど導入されていません。それは、この機械がワッシャー加工しかできないので投資効率が悪いこと、人手がかかり、高温の生地を取り扱う為に労働環境も厳しく、生産性も高くありません。また、単にこの機械を導入したとしても、機械の条件設定等、技術やノウハウもいる為に、作業自体が難しいと言われています。

でも、上述のションヘル織機の織り成す風合いに対して、当社も同じ思いなのです。他社がこの機械を放棄していっても、ワッシャー加工がもたらすシボ、風合いを重視し、温存していく覚悟です。ワッシャー加工の機械は、ションヘル織機と同様、昔ながらの機械なので、メンテナンスに最善の注意を払い、しかも自分たちの仲間のように、調子はどうかと機械に話しかけながら、作業を進めます。
そうやって、ワッシャー加工によってもたらされる天日干しをしたような細かい薄いシワ、風合い、その自然な感じがする布生地は、多くのデザイナーに喜ばれているのです。

今回は、ワッシャー加工の機械そのものの継承についてお話ししました。次回は、その機械を使いこなす匠の技について、そして、その継承についてお話しさせて頂きます。